飛騨の昔遊び アブラメ釣り

3月1日はこの地方の渓流釣りの解禁日である。
残雪の残る岸辺に足跡を付けながら川上へと釣行する、太公望にとって待ちに待った時である。
それにしても昔はどこにでもイワナがいた。家の前を流れる幅60センチ程の側溝にも時折その姿を見たものである。
それでも当時子供の釣りは、イワナを相手にしたものではなく、もっと簡単に釣れるアブラメであった。
アブラメとは土地によっての呼び名が違うが、「ハヤ」のことで「アブラハヤ」ともいう。
アブラメには少し緑がかった「ヤナギアブラ」と黒い斑点のある「ドスアブラ」と呼ばれるものがあるが、これももちろん和名ではなく、飛騨独特の地方名であり、現在ではおそらく忘れ去られた名前であろう。
それを釣るのは食べる為ではなく、ただ釣る楽しみを味わうだけのものであり、釣った魚には申し訳ないがリリースするものの、魚の顎が弱いせいか傷が残って死ぬものもあった。
それでも簡易な竿(近くから笹竹を切ってきて乾燥させただけの釣り竿)に、トチカンジョの糸(クスサンという蛾の幼虫の体内の糸状のものを乾燥させたもの)をくくり付け、釣り針にはメリケン粉を練ったものを餌としたしごく単純な仕掛けを流す。
水深20~30センチ程の川だから泳ぐアブラメも、流す餌も良く見える。腹を空かせたアブラメが食い付いたところで、勢いよく竿を上げれば長さ15センチくらいのものが、数多く簡単に釣れたものである。
経済発展の影に自然が破壊され、昔の川はもう無くなった。
今になっては「小鮒釣りしあの川」ではなく「アブラメ釣りしかの川」が懐かしい。
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by yoas23 | 2006-03-05 20:31 | 飛騨の昔遊び
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