昔々のこと一人の泥棒が村人4人に追われこの地まで逃げて来た。
危うく捕まりそうになった時、森が見えてきたのでその森蔭へと隠れた。 そこは加茂の森という小さな祠を祀った森だが、周りは田んぼで隠れる所も無く、迫る追っ手に泥棒は祠の神様に「どうか私を匿って下さい。もう決して悪いことは致しません。今も働けない両親と病に伏す妻と3人の子を食べさせるために仕方なく悪事を・・・しかし目が覚めましたもう決して・・・」と懇願した。 すると泥棒の前の小さな祠が大きくなり、その中に泥棒が隠れると今度は逆に小さくなってしまった。 追っ手は袋のねずみと思い込んだのだがどうしても見付からず、これはきっと神様がお隠しになったのだろうと諦めて帰った。それから誰言うともなくこの場所を盗人神様と呼ぶようになった。今でも高山市松本町の旧国道の脇には昔そのままの小さな森がある。 昔の百姓は貧しく特に飢饉の年にでも当たると、食べるものもほとんど無い生活だったのだろう。 このような話は各地にあると思うが、悪事を裁く神が泥棒を助ける、いわば罪を憎んで人を憎まずといったことなのだろう。 「悪事を働いても改心することが救われる道なのだよ」ということを語り継ぎたかったのだろう。 飽食の現在ではこのような泥棒は少なくなっただろうが、改心出来ない悪人たちが多いような気がする。
by yoas23
| 2007-04-07 02:58
| 飛騨の民話
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